国産材委員会Report

2022年度活動計画

地域工務店の実務に役立つ国産材等の知見を普及し、国産材の活用を促進していきます。

気候変動や生物多様性の問題が世界中で注目されているなかで、
住宅業界においても国産材の利用拡大が必須となってきました。
国産材委員会では、国産材に関する以下の情報をJBN会員工務店に提供していくことにより、
国産材利用の促進、工務店実務の生産性と品質の向上、そして顧客満足度の向上を目指していきます。

①様々な地域の国産材利用の取り組み事例
②工務店の実務に役立つ国産材情報
③木材が持つ可能性や環境性能などの情報

国産材委員会では、木材流通の川上から川下までの”線”のつながりだけではなく、
行政や他業界との連携といった”面”でのつながりを構築しながら、国産材利用が地域工務店にとっての差別化となり、
その優位性を高めることができるセミナーとベンチマーク研修を実施していきます。
なお、日本林業経営者協会青年部、日本木材青壮年団体連合会と三者協議会により、JAS材普及啓蒙活動を展開します。

委員会開催:年4回、セミナー開催:年3回
・令和4年05月11日(水)委員会、セミナー開催
・令和4年07月05日(火)委員会、セミナー開催
・令和4年11月09日(水)全国大会 分科会
・令和4年11月22日(火)委員会、ベンチマーク研修  
・令和5年02月07日(火)委員会、セミナー開催

活動報告

令和5年2月7日 セミナーを開催しました

東大寺の大仏殿や法隆寺の五重塔などがあるように、
日本人は古来より木と上手に付き合い、さまざまな技術を用いて
多様な木造建築を建設し修復しながら長く利用してきました。
そして、それらの建築物には、たくさんの国産木材が使われてきました。

現在、持続可能な社会を構築していく上で、
木材利用が大きく注目され、住宅、非住宅、規模の大小に問わず、
木造化・木質化が進んでいます。
そのような中で、今回は日本建築史と歴史的建造物の保全修復を専門とされている、
学校法人工学院大学の理事長である後藤治先生をお招きし、
「木と日本の伝統建築」をテーマに、創意工夫にあふれた伝統木造技法や、
その美しさを学ぶセミナーを開催いたしました。
講演の中で、国産材の利用拡大については、
「地域の製材所と工務店の連携が重要である」と説明し、
そのためには国産材の特性を理解した職人の技術が必要であり、
手刻みなどの伝統工法の技術力があれば、重要文化財の保護といった
文化の振興と地域の活性化にも役立つことを説明いただきました。

令和4年11月22日 委員会を開催しました

小金井公園の中に位置する江戸東京たてもの園は、
1993年に貴重な歴史的建造物の文化遺産を次代に継承することを目指し開園した野外博物館になり、
約7ヘクタールの敷地内に30棟の文化的価値の高い歴史的建造物が移築復元展示されています。
日本の伝統建築の中には木材利用のすばらしい知恵やノウハウが蓄積されており、
国産木材の利活用において参考になる点が多くあることから、
国産材委員会主催で見学会を実施しました。

見学会では、園の技術員の安藤 亜由美 氏に案内と解説をしていただき、
江戸時代後期に木造平屋で建てられた「八王子千人同心組頭の家」、
明治に建てられた洋館「デ・ラランデ邸」、
日本の近代史に三井財閥として名を残した三井同族十一家の総領家「三井八郎右衛門邸」、
二・二六事件の現場となった「高橋是清邸」、昭和に建てられた「前川國男邸」の見学を行いました。
見学会最後に保全改修工事中である安政時代に建てられた「鍵屋(居酒屋)」の修繕現場の見学を行い、
瓦や内装についての修繕方法について解説をいただきました。

令和4年11月9日 分科会を開催しました

令和4年11月9日に法政大学 デザイン工学部 網野 禎昭 教授をお招きし、分科会を開催いたしました。

テーマ:「ヨーロッパの木造建築から学ぶ “山と街の豊かな連携”」
 日本の木材利用は年々増えていますが、このまま木材が使われていった先に豊かな循環社会ができるのか。
山にお金が戻らないために再造林や植林が適切に行われないのではないか。
数十年後は日本の森も豊かではなくなり、将来我々の子孫が今と同じように木を使えなくなってしまうのではないか。
循環型社会を世界の最先端で研究されてきた網野先生から、
ヨーロッパの事例も含めて建築と森林と豊かな社会をどうやって築いていけばいいのか、
お話していただきました。

令和4年7月5日 オンラインセミナーを開催しました

数多くある、材木屋の未来は現在若手後継者達に委ねられております。

今回のセミナーでは、野地木材工業(株) 専務取締役 野地伸卓 氏、
フルタニランバー(株) 代表取締役 古谷隆明氏、(株)小友木材店 代表取締役 小友康広氏をお呼びして、
「木材産業の新時代 材木屋のイノベーション戦略 〜シン・ザイモクヤ 若手後継者たちの挑戦〜」と題した
生き残りをテーマとしたセミナーを開催しました。

最初に小友様から「世界で一番カッコいい木材店」を目指すため、
木材事業とITとエリアリノベを掛け合わせた戦略を紹介した。
ITではShopBotを使用した半完成品で一緒に商品を作っていき共感を生む活動、
エリアリノベでは、閉館した百貨店を利用して花巻おもちゃ美術館を開館した。
その結果おもしろいことを行う姿勢が評判になり、
ワークショップの依頼や木育空間の施工依頼が増えている事例を発表されました。

次に野地様の紹介では、三重県内の製材工場の減少や需要減など不利な状況の中、
マイナス要素をプラス要因へと視点を変え、こだわりのある人に選ばれる製材所にしていくビジョンを掲げた。
そのために建築家と仕事を行い、新商品を開発やSNSを利用して
多くの消費者に野地木材を知ってもらえた事例を紹介頂いた。

最後に古谷様の紹介では、入社時から赤字続きだった会社の現状から、従業員の評価や賞与の制度を取り入れ、
各自がやりがいをもって活躍できる職場環境をつくり社内のモチベーション向上させた結果、業績が回復した。
古谷様が代表になられてから改質水と抗火石を活用した乾燥技術や
IoTを活用した業務の効率化を図る新事業を行い、
木材流通の効率化や会社のブランディング活動を紹介した。

その後参加者と視聴者のディスカッションを行い、セミナーを終了しました。

令和4年5月11日 オンラインセミナーを開催しました

昨年からのウッドショックの余波、そしてロシアのウクライナ侵攻問題により
輸入木材の供給がますます不安定になってきました。
そのような中で、世界の木材需給情報の把握と国産木材の適切な利用拡大が、
木造建築業界において重要なテーマとなっています。
元JBN国産材委員長でもある木村木材工業株式会社 代表取締役社長 木村司 氏をお招きし、
「危機の時代の木材調達」と題して、世界の木材需給概況と今後の予測についての解説や
想定される事態への対応策についてご講演いただきました。

最初に、ウッドショックと合板不足の背景と原因をお話しいただきました。
今年の2月中旬までは木材価格が値下がり傾向でしたが、
ウクライナ侵攻によりロシアからの輸入木材に先行き供給不安が出て、
ロシア産赤松野縁やレッドウッド集成材の値下げ販売が止まり、木材供給が厳しくなりました。
木村氏の私見では、今後の状況はかなり悪く、昨年以上の木材不足が想定され、
長尺針葉樹合板は入手できなくなるため代替品を検討する必要があると説明。
欧州材については、
戦争開始後、EUは大きく輸入依存していたロシアとベラルーシからの木材製品を禁輸にしたことから、
日本への木材輸出余力の減少や円安による、さらなる価格の高騰が考えられると説明した。

また今後に予測されるのは、住宅ローン金利の上昇である。
アメリカでは住宅ローン金利の上昇により、住宅価格の上昇が発生して住宅の需要が減少している。
この金利上昇の現象は今後日本でも起きると予測し、資材高による住宅価格の高騰との二重苦により、
大幅な住宅需要の減少が予想される。

最後に、今後予測される事態への工務店が取るべき対応策を3つ挙げていただいた。
1つ目は早期発注である。
入手困難な木材も、納期さえあれば何とかなる場合も多いので、前もって発注することが一番の対策である。
2つ目として、ホワイトウッド・レッドウッド集成材から脱却である。
もはや輸入材は安くないと考え、国産材など他産地への切り替えが大事であると説明。
3つ目に山へ、製材所へ足を運んで関係をつくることである。
工務店も製材工場も、持続可能な経営をしていくためには、
定常的に長い期間取引ができる関係を作り上げていくことが大切であり、
そのためにも山へ、製材所へ足を運んで直接対話することで「おなじみさん」になることをお勧めすると
説明いただきました。

その後、参加者からの質疑に対応いただき、セミナーを終了しました。